蜀同盟

蜀の民よ、集いたまえ。~諸葛亮中心の三国志話と、現代世俗話~

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蜀同盟(c)吉野圭

『ドラゴンクエスト ユアストーリー』の評価が驚くほど低い件。ファンタジーを現実で踏みにじるべきか否か

ツイッターフォロワー驚異の4.46万人というCDBさんが『ドラゴンクエスト ユアストーリー』の感想を書いていて、興味深く読んだ。(8/7追記あり)

www.cinema2d.net

 

子供心を踏みにじる、サイコパスな行い

上記事から引用。

僕は基本的に駄作をいじって笑う、とか、失敗作をみんなでボコボコに叩くというノリがあんまり好きではない。創作なんて基本的に嘘っぱちなんで、ぶっ壊そうと思えばどんな名作だってグチャグチャに批判できるわけである。誰かが必死に書いて震える手で差し出したラブレターを目の前でビリビリと破けば、そりゃ確かに告白してきた相手よりは優位に立って見下すことができるだろうけど、基本的には僕は誰かに向けて下手くそなラブレターを書いて恥をかく側にいたいと思っている人間である。その方が人生が楽しそうだし。

……(略)……

さっきラブレターの話をしたが、ことこの映画にかぎっては、映画の作り手の方が観客が差し出したラブレターをビリビリと破り捨てて「ふん」と鼻で笑うような映画だったのである。

……(略)……

 山崎貴監督がやったのは、そういう子どもたちにぬいぐるみを差し出して、子供がすっかり感情移入してぬいぐるみを友達だと思った2時間後に取り上げ、腹を引き裂いて中の綿を引きずり出し「お前、こんなもんただの布だぞ」と踏みつけたあとに「まあそうはいってもぬいぐるみで遊ぶことは否定しないけどね。ぬいぐるみ最高!」みたいなことを言って腹に綿を戻したぬいぐるみを突き返してるようなものだと思う。しかもそのぬいぐるみは、山崎貴監督がデザインしたものでもなんでもないのである。

 

うーわー…………

これは渡邉義浩らが『三国志』へ行っている歴史改変の暴力に近いと感じる。

後半など、まるでサイコパスではないか。残酷な行いに青褪めた。

 

ラブレターにぬいぐるみ、とてもうまい喩えなのでストーリーを知らなくても酷さが伝わって来た。

ネタバレのレビューは読んでいないから結末は分からないが、推測すると『ドラクエ』で育ったかつての子供たちの心を踏みにじる酷い作品であるらしい。

 

残念だな。

この夏『三国志展』へ行くのを諦めた代わりに『ドラクエ』映画を観て心を慰めようと思っていたのに。

すぎやまこういち氏の、あの曲を聴いて殺伐とした心が湧きたっていたのに。

 

監督は山崎貴氏かあ……、そんな悪い映画を作る監督ではないと感じていた。

でも1964年生まれで、ドラクエ世代よりは少し上か。

と言うことはドラクエに熱狂する年下たちを眺め、「いい年してゲームに熱中しやがって。バカじゃないのか。目を覚ませ」と見下していたのだろうか?

 

マンガやゲームなど芸術家たちから「サブカルチャー」とレッテルを貼られている作品文化は、その作品世界に子供のころ馴染み、感動を友達と共有した世代でなければ価値は分からないものだ。

何より「子供心」という最も大切なものを投影している、思い出そのものが無いなら理解することは至難の業だ。

 

私だって年上世代の文化はよく分からない。

年下世代のマンガやゲームも、本当には分からない。

年下のマンガ・ゲームの文化価値を否定する気は全く無く、むしろマンガ・ゲーム全体へ畏敬の念を抱いている者だが、畏れ多いからこそ自分の世代ではないマンガなどを分かった気になるのは失礼だと思ってしまう。

 

自分が映画監督だったら、子供時代に馴染みのなかった作品の映画化などの仕事は依頼されても断るけどな。

多くの人の「子供心」を背負った作品は、関わったことがない他人にとって不可侵の世界であると思う。

 

『勇者ヨシヒコ』のほうがある意味、正しいドラクエいじりだった

比べてみれば、『勇者ヨシヒコ』という深夜帯ドラマのほうが『ドラクエ』世代の心を正しく理解したパロディだった。

 

上リンクのウィキペディアより引用、

放送開始前からメディアの報道では「ドラクエ風」であると紹介されていたが、実際にドラクエ発売元のスクウェア・エニックスも「協力」としてクレジットされており、多くの回でスライムの張りぼてやゲームと同じ効果音など、ドラクエそのままの要素が用いられている[注釈 2]。また、ドラゴンクエストシリーズ公式サイトからも本作の公式サイトにリンクされている。

誰もが分かる『ドラクエ風』。ところがドラマの中では一言もエニックスやドラクエという言葉が出ないところが憎い。

『ドラクエ』のほかに『ドリフ』など細かいパロディの連発に、ニヤニヤが止まらなかった。年齢を知らなくても監督自身が初期『ドラクエ』を経験した世代であり、愛を籠めてパロディを描いているのが伝わってきた。

 

福田監督は『今日俺』でも原作への愛を忘れず、原作読者を裏切らなかったと思う。だからヒットしたし、『今日俺』世代以外のファンも獲得した。

 

これを言ったら元も子もない気がするが、『ドラクエ』の映画化は福田監督が担うべきだったのでは?

高精度のCGなどより、愛のあるチープな実写のほうが遥かにいい。

 

歴史小説、三次元をファンタジー化した問題

こういう子供時代のファン心理を思い出し、自身のこととしてファン心理を踏みにじられる気持ちを考えるたび、『三国志』で「史実・史実」と言い続けることを申し訳なく思ってしまう……。

 

「子供のころ横山マンガ『三国志』に夢中になり、関羽が酷い目に遭ったときはショックで熱を出した」

などというファンの方の話を知ったりすると……他のフィクションで自分も同じ想いをした経験があるだけに、「史実・史実」と主張する自分のほうが悪いことをしている気になってくる。

 

いや、「史実」のほうへ思い入れが深いこちら側からしてみれば、フィクションのほうが後で勝手に作られたものなのだが。

史実の人格や経緯をフィクションで変えられたことについては、絶叫してしまうくらいの犯罪に見える。

(叫びの声、ファンに敬意をはらい自粛でカット)

 

三次元は、三次元。

現実人物は、現実人物。

現実の人間が存在した事実を消すことはできない。消そうとするほうが罪。実際に生きた人間から見れば最大の人道蹂躙だ。

気の毒だけど歴史ファンの宿命として、いつかフィクションとかけ離れた現実が子供心を裏切る日は訪れる。

だから誰が悪いのかと言えば、始めに三次元を極端なファンタジーとして描いてしまった作家たちだろう。ファンタジーは色褪せることのない完全架空のキャラクターで描くべきだ。そうでなければ必ず夢が壊れる悲劇を生む。

 

それでもお互いにとって救いと言えるのは、古典的フィクションは現実を濃縮して拡大した「真実」のエッセンスを含むということ。

もしフィクション派の人たちが史実の根本にある「真実」を受け入れてくれたら、史実派とも同じ世界を共有できるのではないか?

私が上級のマニアたちの話を眺めるとき、意外にもそんな「真実」を共有できたと感じられることが多くて救われる。上級マニアになると現実に何があったか、当人たちが何を思っていたのかまで感じ取る超能力がついてくるらしい。

 

しかし世の中には最初から「真実」を見るつもりなどさらさら無い人も存在しているのだ。

たとえば上の、作品も観客も素材としか見ていない傲慢な映画監督。

それ以上に酷いのは自分が捏造した話を「史実」と嘘をついてばらまき、「核心の真実」までをも改変しようとしている歴史学者たち。これは長い歴史文化とともに人々の心も殺そうとする大罪だ。

 

誠意や愛が欠片もなく、核心の真実まで捻じ曲げてファン心理どころか史実までをも踏みにじる。

このように精神文化を破壊することを愉しむ人たちを「サイコパス」と呼ぶのでなければ他に何と呼べばいいのか。私には分からない。

 

 

8/7追記 「冷静に考えてみた」を読み

以下敬体。

 

CDBさん、ずっとトップでバズってらっしゃる。凄いな。

まあ確かに前回の記事はストレートな言葉を使っていたからな……。

あれは反発も共感も激しいものになると思う。

 

今回、新たに書かれた記事に私も同意です。

www.cinema2d.net

書いた記事に嘘はないものの、どうも映画を見た人同士の共有や反論ではなく「見てないけどこういう内容なら見なくていいな」という方向でバズっている節があり、これは意図するところではないんですね。どんな映画も、見ないで切るべきではないと思う。ちょいちょい念を押してはいるものの、やっぱり文章全体の勢いで「とにかく最初から最後までクソ映画らしい」という文脈で読まれてしまっているらしいのですが、


全く仰る通り。 映画を観ないで斬るのは筋が通っていないですね。小説もそう、読んでからの批判でなければ。

(歴史も同じ。史実を知らない人の悪口は聞くに値しない)

 

私はあくまでもCDBさんの記事を読んで 「映画館で高いお金を出してまで観るものではなさそうだな」 という感想を持っただけです。テレビ放送などで機会があったら観ると思います。

あまりお金持ちではないので、限られた期間の限られた上映映画を選ぶ前に、体験した人のレビューを参考にするのは正当かと。

ひと夏の大切な時間を、駄作で無駄にする可能性もまたリスクのうちですからね。

 

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