蜀同盟

蜀の民よ、集いたまえ。~諸葛亮中心の三国志話と、現代世俗話~

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蜀同盟(c)吉野圭

赤壁戦の話はどこまで現実なのか? 他、三国志フィクションで誤解が浸透している話、本当のところ


※画像はhttps://redcliff.jp/index.htmlよりフリーダウンロード。この絵はカッコイイのですが…。

諸葛亮については、三国志フィクションのせいで嘘の話が浸透しています。
たくさんのフィクション設定がありますのでここでは有名な一部の「嘘」のみ指摘し、史実(現実と推測される話)をご紹介します。

2019/5/10 注意書き追加

赤壁戦

赤壁戦での諸葛亮と周瑜の交流、「周瑜を殺した」「風を呼ぶ」などの亮の活躍は完全フィクションです。
現実の諸葛亮は劉備陣営から「使者」として孫権を説得するため赴いています。

※以下、まだ国家としての呉は建国されていませんが、地域の名称として孫権陣営を「呉」と呼びます

 

赤壁戦の真実

史実としては、
「苦肉の策」
「連環の計」
これらの作戦は呉の人々が考え、実際に呉の人々によって実行されています。
地元の人々ですから、大風が吹くという知識も予め持っていたわけです。住民に調査するまでもありません。

フィクションでは孔明が藁を積んだ船を敵陣へ近付け、わざと矢を撃たせて藁で回収し、たくさんの矢を持ち帰るシーンがあるようです。
まさか、と思うでしょうがこれも呉の人々が行った史実です。
と言うよりも、当時はこの程度の裏技はどこの軍隊でも行われていたと考えてください。

秋月さやか先生など、フィクションを鵜呑みにしやすい人たちが史実だと信じている話
「周瑜を殺したのは詐欺師の孔明だ」
これらは言うまでもなく作家が考えた嘘のストーリーです。
このような程度の低いフィクションを鵜呑みにしていると、本物の詐欺師に狙われやすくなりますので注意してください。
(それにしてもこの創作は諸葛亮を貶めていると私は思いますね。歴史マニアさんたちは何故こういう話がお好きなのだろう?)

現実の諸葛亮は、当時27歳の若造です。
しかも出仕したてのド新人です。
使者としても非常識、先方に対して失礼に当たってしまうくらい若い新人なのに、先方のお偉方と伴に戦略を立てる権利などあるわけがないでしょう。
実態は人質であったと考えるのが妥当です。※筆者独自の考えです。こんな説は史書にも解説本にも載っていませんので他所で語る時はここへリンク願います。

何故なら当時の劉備はかなり影響力のある有名人であり恐れられていました。甘く見ることのできない、相当に切れるリーダーで裏切りもあると考えられていたため、確実に協力を約束させる材料が必要。本来なら正妻を預ける場面ですが、当時の劉備は妻を失った直後でそれもできない。それで魯粛は、劉備が可愛がっている新人を所望したわけです。
実は「使者」と言いながら生きて帰れるかどうか微妙な役目。
そのため、劉備は赤壁戦後、亮が帰って来るかどうか心配していたと記録にあるのです。

ちなみに孫権が劉備の協力を求めたのは、提供する兵力もですが、何より劉備の名声が必要だったのです。当時の民衆に絶大な人気があった劉備の名声を借りることができれば、地元住民の協力(および兵の補充)も容易となり勝利の確率が上がります。
この、「当時は劉備が絶大な人気があった(人気という何にも代えがたい力を持っていた)」という時代背景を想像できないことが、お粗末な歴史家の妄想とチープな三国志フィクションを生む要因となっています。
いつの時代も本当に力を持つのは一般民です。それなのに歴史家たちは民の存在をカットして考えるので正しく推測できない。近現代に照らした想像力が必要です。

諸葛亮が果たした功績としては史書に記録されている通り、この人質として赴き劉備の協力を保証したことと、先方を説得して曹操との戦を決意させたことにありました。
最近、亮を貶めたい歴史家たちが、
「孫権は始めから参戦を決意していたから諸葛亮の説得には何の意味もない」
と布教活動していますがそんなことはありません。
亮が行かなければ孫権は反対派を抑えきれず、曹操に抗戦することはなく、三国時代も存在しなかったことでしょう。

なお、「曹操軍80万」という数字も嘘です。実際の公表は10万、それでも多くて現実には6万~7万程度。
数十万人規模の兵力は第二次世界大戦の連合軍など、近代戦でようやく現実的になる数です。
『三国志』では常に数十万人の兵士が戦闘する設定になっているそうですが、当時の人口から考えても毎回この数の兵士を動かすのは不可能。
歴史フィクションは軍事素人が書いた空想物語なので当然ながら非現実的なのです。

【関連記事】 映画『レッドクリフ』感想

 

天才の評は荊州時代から

諸葛亮は荊州時代に三郡を任され、この財政を立て直したために大変評価が上がっています。
亮が「天才」と呼ばれ始めたのはこの頃からと考えて間違いないでしょう。

 

諸葛亮は天才で、高飛車だった?

上で書いた通り周囲の人々から「天才」と呼ばれたのは現実の話ですが、実際に天才だったかどうかは分かりません。ただ少なくとも「高飛車」な性格ではなかったと思います。史実には高飛車なエピソードはないはず。むしろ下位の武将から「臆病者(怯なり)」と罵倒されたりしていますので、偉そうには振る舞えなかったタイプでしょう。

 

戦場にて、一瞬で作戦を立て、現場で指揮する

劉備の在世中、諸葛亮は内勤です。軍師トップになると作戦は国内で立てるもの。従って記録には具体的に表現されていませんが、蜀の長期・短期戦略で諸葛亮が関わらなかったものはありません。

「また戦に勝ったことなど数えるほどしかなく、何故この男が稀代の軍略家と讃えられるのかさっぱり分からない。孔明神話というものか。」by酒見賢一

戦争は現場のチャンバラゴッコだけを意味していて、作戦は現場で殿様の耳にささやくものだと思い込んでいる人は知能が幼稚園で止まってしまったのでしょうか。幼稚園生はまず「戦争とは何か」から勉強してください。
お勉強 →諸葛亮の軍事能力ってどうなの? 知恵袋民たちの意見ログ(保存版)

 

神算鬼謀、奇策を弄した?

最大のフィクションです。性格タイプとして創造性があったことは確かですが、戦争では「諸葛亮は常に正道を選んだ」と記録にあります。軍事の基本から言っても、プロの戦略家が奇策ばかり使うことはあり得ません。奇策だけで勝てると思うのは、軍事を知らない人々による空想です。参考:奇策はタブーという話

 

常に羽の扇を持ち歩いていた?

戦略家は多忙につき、貴族のような扇子を持ち歩くことはあり得ません。参考、になるかどうか。私の考え:現実の孔明は「白羽扇」を持っていたか?2

 

劉備は諸葛亮を信頼していなかった?

最近、某国の教育機関である孔子学院の学長や生徒たちが書籍・インターネットで、
「劉備は本当は諸葛亮を全く信頼しておらず実はいがみ合っていた。病床にあって劉備が諸葛亮へ、“君が政権を執れ(君可自取)”と遺言したのは、諸葛亮を貶めて潰すための策略だった」
という説をあたかも史実であるかのように装い、ばらまいています。
これは程度の低いフィクションであり、歴史改変するための捏造話ですので信じないように注意してください。
この説を論破するごく簡単な話を載せました →劉備と諸葛亮の信頼は嘘だった? 遺言の真相

 

魏延に関する信じられないフィクション

2018/8/6、『三国演義』由来のフィクションを通読したことのない私は、以下のようなフィクション設定を初めて知って仰天しました。

私は三国志が好きで何度も読んでいますが、諸葛亮孔明は好きになれません。

私が彼を好きになれない理由が3つあります。

1つ目は魏延に対する扱いです。彼が家臣になった時に反骨の相があるからと殺そうとします。そして、北伐の際には敵諸共焼き殺そうとします。最後には、自分の死後に魏延だけを敵中に孤立させるように指示します。さらに北伐の際に魏延の献策した子午道からの長安奇襲作戦も一蹴し、持久戦を取ったばかりに敗戦を重ねます。この魏延への対応はあまりにも酷く、彼が謀反を起こしたのも肯けます。

→諸葛孔明というキャラクター、好きか嫌いか?より

こんなフィクション設定を考えた創作家は狂っていたのだとしか思えません。
それ以上にどうかしているなと思うのは、ここまで愚かなフィクションを鵜呑みにして信じている人です。
この質問者の存在が、ほぼホラーです。

※筆者の考え、追記: ただでさえ人材不足の蜀において、諸葛亮が、貴重な将軍である魏延をどうして焼き殺そうとするでしょうか? 理論上でも有り得ないことです。焼き殺すどころか排除する意識もなかったでしょう。ただ魏延の作戦が妥当ではないと考えたために取り入れず、そのため魏延の恨みを買っていたようです。いっぽう諸葛亮のほうは「人」と「提案内容」は切り分けて考えるタイプだったため、人間としての魏延を嫌っていたことはないでしょう。(合理的に切り分けることがなおさら、魏延の憎しみを買ったのかもしれませんが)

 

権力簒奪を狙っていた、皇帝をないがしろにして操った、曹操を目指していた?

『諸葛亮は曹操を目指していた?』 byよかミカンより。
あり得ません。
現実には劉備も劉禅も操ったとは言えません。
操るどころか、劉禅は彼の意見を聴いていたかどうかも疑問
このような設定を好む人はチープな三国志フィクションしか読んだことがないのでしょう(または妄想歴史家の解説書を無考えに鵜呑みにしているか)。
なお知的タイプというだけで犯罪を目論んでいると決めつけるのも誤った認識です。
参考:サイコパスは知能が高くなかった

 

まとめ

きりが無いのでこの程度で。
『三国志』のアニメやマンガなど、描かれたフィクション話をそのまま「現実だ」と思い込める現代人が存在することを知り、少々ショックだし引いています。
あんなものを信じるのは教育制度がない昔の人々だけだと思っていました。
少なくとも義務教育を受けているはずの現代人までもが、このようなフィクションを信じるのは驚きです。

『三国志』フィクションを現実だと頑なに信じている人たちは、きっと「ドラゴンボール」も実在すると信じているし、『進撃の巨人』の巨人の存在にも怯えて暮らしていることでしょう……。怖い。
このような人は詐欺師にもカルト宗教にも、独裁政権にもあっさり洗脳されてしまうはず。危険かつ有害です。

ここへ来られた読者様はどうか、アニメやマンガ、ゲームを鵜呑みにしない程度の知能を身に付けるようにしてください。

 

参考

rtk3alliance.kslabo.work


※2018/11/28一部文章追加
※創作家の方、メディアの方へ、この記事を利用する際はご一報のうえ著作者名「吉野圭」と当URLを明記してください。当記事はアーカイブ済です。

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