曹操は正義の人だった!『三国志Three Kingdoms』第1話~3話 初心者さんの感想

三国志 Three Kingdomsより
GYAOで『三国志 Three Kingdoms』第一話から無料配信が始まったらしい。
5/15(木)まで。観たいと思っていた方はお早目に。

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はじめての三国志!(文字通りに) 初心者さんが抱いた感想

この無料配信について教えてくれたのは私の職場の上司なのだけど、 彼は生まれてこのかた一度も『三国志』に触れたことがない。フィクションも史実も全く知識のない人。(主要人物名だけはなんとなく聞いたことがあるらしい)

しかし最近は私の影響なのか中華ドラマを観るようになり、『三国志』への興味も湧いてきたそうで、 今回初めて触れる三国志としてこのドラマを観ている。

彼が私へ真っ先に告げた感想がこちら。※彼が語ったママ
なんだこれ史実なのか! だとしたらすげーな、曹操って奴。ただの気持ち悪い殺人鬼じゃん!
最初から全部、口から出まかせの大嘘つき野郎。自己正当化してばっか。自分の利益しか考えてない。
殺人まで正当化してびっくり。 現代でも良く見かける典型的なサイコ野郎だ!!
驚いたな。
いきなり冒頭から人物の本性本質を見抜くとは。
しかもフィクションなのに史実を見抜く。尊敬してしまう。

※この上司は「目を見るだけで相手の本性が分かる」と豪語する人。まさか物語からも直観的に人物本性を読み取ることができるとは思わなかった

彼の感想を聴いて私も「もしかしたら『TK』は史実の割合が多いのかも」と感じ、初めてフィクションドラマを観てみようかなという気になった。

いつも三国志フィクションには生理的拒絶感を覚えるから恐々なのだが、とりあえず3話まで観て今のところ平気みたいだ。(冒頭だし曹操についての話が中心だからかもしれない)

ただ最後「日本語監修 渡邉義浩」の字幕を目撃してしまい、そこだけ吐き気を覚えたが。
なるほど中共制作だから、中共御用学者が関わっていて当然か……。
気色悪いがしばらく我慢して観よう。迂闊にエンドロールを観て名前を目撃してしまわないように注意しつつ。

全体の感想

まずこのドラマ、劉備・関羽・張飛の扱いが雑過ぎて驚いた。
劉備に関しては史実どころか『演義』も完全無視。あまりの露骨な政治臭に引いた。

これは『三国志』では全く無い。
なるほど。日本人の三国志マニアさんがこの作品を奨めない理由を理解した。

政府の政策に則って、無理やり曹操を正義のヒーローとして描こうと努力していることが丸分かり。
やはり中共による共人のための物語だな、と感じる。これでも昔よりはマシになったのだろうが。

※この記事だけ読んでいる方のために解説: 共産思想は伝統や歴史を破壊しなければならない、と説く。このためどこの共産国でも伝統文化の破壊が行われてきたが、中国は最も激しい文化破壊が行われた国。中国において人気の伝統文化『三国志』も激しい攻撃を受け、演劇を観たり歴史小説を読むことは禁じられた。特に劉備を始めとする蜀人物は「義」の象徴であるため誹謗中傷の論文をばらまくなどして、徹底的に貶める政策がとられた(現代日本で行われている渡邉義浩ら左派団体の活動はその流れを受け継いでいる)。90年代以降、中国政府による伝統破壊工作は緩和したようだが相変わらず劉備の名誉回復は許されないらしい。いっぽうで最近の中国政府は、党の独裁・強権を正当化するために独裁者として有名な曹操を「正義のヒーロー」として崇拝する政策をとっている。日本でも開催された『三国志展』はそのためのプロパガンダだった。

他に驚いたのは、殺戮シーンで血しぶきが飛ぶなど残虐表現に容赦が無かったことだ。
『TK』は中国の「大河ドラマ」で、お年寄りから子供まで観たものだろう?
日本だったらお茶の間のゴールデンタイムに流れる大河ドラマで、血のりをたっぷり使った残虐シーンを放送するなど有り得ないが。
時代劇でも斬り捨てシーンはあっても血しぶきは無いね。これが“お国柄の違い”というものか。

私は昔から歴史物で残虐さを隠すことは有害だと思ってきた。
リアルな人々の苦しみや恐怖を隠してヒーローに中毒する物語ばかり描くから、現実では平気で残虐なことを行える人々が育ってしまう。できればもっと現実的に描くべきだ、そのほうが猟奇殺人が減るはずと思う。
でもさすがにお茶の間へ流す大河ドラマで残虐シーンを描くのはどうかな……。
これでは内容的に中途半端だから逆の方向へ作用しそうだ。
殺される人の苦しみ、怒り、無念さのほうをもっと忠実に描かないと、結局は血に中毒する英雄崇拝のカルトばかり育ってしまう。「さすが獣化教育の国」と呼ばれることになりかねない。

まあそれも今後の曹操の描かれ方次第だが。とりあえず判断は保留。

第1部《群雄割拠》 第1話「曹操、刀を献ず」

ワンパターンの桃園結義から始まらないことは新しくて良いと思った。
だが、いきなり董卓暗殺未遂から話が始まるのはいくらなんでも端折り過ぎと思う。

黄巾乱も、宦官虐殺も描かれていない。
黄巾乱だけたった1秒の言葉で説明するという驚異の省略。

これでは初めて見る人が時代背景さえ全く理解できないのでは?
中国庶民にはお馴染みの話だから端折っても大丈夫なのかもしれないが、子供たちは理解できたのだろうか。(それとも中国では子供も既におなじみの話を知っている?)

少なくとも日本人の初心者が、これで物語を理解しようとするのは不可能だ。映画『レッドクリフ』以上に意味不明だろう。
現に初めて三国志に触れる上司は第1話を観たあと
「時代背景が分からん! ちんぷんかんぷん」
と言っていて、私がテレワークにて時代背景などを説明するはめになってしまった。笑

おそらくこのドラマでは曹操を正義のヒーローとして描く必要があったので、無理やり董卓暗殺から話を始めたのだろう。が、だとすればタイトルを『三国志』としてはならなかった。『曹操伝記』とすべきだ。

とは言え曹操の伝記としては、これでも嘘八百の『蒼天航路』よりマシと思う。
なんとかして曹操を美化しようとする努力は見えるのだが、「阿瞞(嘘つきちゃん)」というあだ名を呼ばせるなど、史実に基づく話も多い。中国の一般庶民の厳しい目があるからだろうか。

第2話「曹操、亡命す」

2話の中ほどで桃園結義のシーンが一瞬だけ流されて失笑。

189年の曹操による董卓暗殺失敗から、いきなり184年の桃園へ飛ばされ、何の説明もなく「義兄弟の契り」シーンを見せられる。
意味不明過ぎる。

何も知らない人が見ていたら
「誰だよあの三人」
「何なんだよあの一瞬だけの花のシーンは」
と頭の中が“?????”で一杯になり、その後の話が入って来なくなるはず。

これで真面目にドラマを作っているのだとすれば、現代中国人は相当に物語を描くのが下手ということだ。
現実は政府からの圧力があってなるべく劉備について描かないようにしているのだと思うが。中国庶民はこれだけでも分かるからカットしたかな。カットした理由についても国民お察しだろう。

いっぽう意外なことに、曹操による呂一家殺戮の話が描かれていて良かったと思う。
「大義のためなら善良な人を殺しても可」として殺戮を正当化するためかもしれないが、現実の事件を無かったことにするよりは良い。

第3話「曹操、善人を誤殺す」

豚を殺す相談をしていた呂家の人々が、自分を殺す相談をしているのだと聞き誤って殺戮してしまう曹操。
これは史実の話。

※史書には様々なシチュエーションで記録されているが、多くの史書が同一の事件を記しているので、曹操が呂一家を殺したのは間違いなく事実と考えて良い。

このシーンにて、誤解に気付いたとき曹操が悔恨の表情を見せるのは史実と違うし、物語の筋としてもおかしいと感じた。
「我人に負(そむ)くとも 人我に負かせじ」
(俺は他人に逆らうが、他人が俺に逆らうのは許さん)
などと豪語する者が人殺しを悔恨するわけがない。
曹操は生まれついてのサイコパスだから、実際のこの事件では誤りだと気付いた時でも狼狽しなかっただろう。
従って自分の悔恨を癒すためにわざわざ呂家へ戻り、呂伯父を弔うことなど有り得ない。
ただ殺戮の現場で食事をしたり、ぐっすり眠ったりするのはサイコパスとして現実的な表現と思った。
参考:サイコパスの行動特徴


ところで第3話での劉備登場シーンには再び失笑。
何故かこの物語では三人が、黄巾乱から何もせずに故郷で筵を売ったり、門番をするなどして暮らしてきたりしたことになっている。
それなのに名前を名乗っただけで袁紹の董卓討伐に参加できてしまう。

このドラマで劉備は曹操のおかげで門を入ることができ、袁紹にも引き合わせてもらえたことになっていたが、曹操の懐の広さを表すための作り話だとしても無理があり過ぎる。
いくらなんでもそれまで一度も官職に就いたことが無く、全く誰にも名を知られていない人物が、あのような状況で袁紹軍に参加できるはずがない。
軍隊のセキュリティとして完全におかしいだろう。(その前に城門のセキュリティがおかしい)

これはやはり政府への忖度による不自然さではなく……脚本家の能力に激しく難があると見るのが正しいだろうか?笑

記憶しておきたい場面

第3話、陳宮の台詞が気になった。
「曹操の話は剣よりも恐ろしいかもしれん。剣は呂家を殺したのみ。だが曹操の話は、天下の心を誅殺できる

この陳宮の言葉は、曹操について語っているようで曹操のことではないなと思った。
サイコパスはあくまでもその時代の、権力が及ぶ範囲の人間だけを殺す。その意味で曹操も董卓もあまり変わらない。

人の命を奪うサイコパスよりも恐ろしいのは、心を誅殺する“言語(思想)”なのだということだ。さらにそれが伝播すること。

このドラマは政府に忖度しているようで裏には様々な意図が隠されているようだ。
陳宮が曹操と牢獄で語らうシーンなど、よく当時の政府がこの放送を許したなとハラハラしてしまうくらい危険を冒している。

物語のクオリティとしてはどうかと思う作品だが(笑)、これは過去とともに、現代中国人の本音を知るには良い作品かもしれない。


別館にて続き >>私的な本音感想

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